副題は「ときをためる暮らし それから」。
聞き手・編集:水野恵美子、写真:落合由利子
前作『ときをためる暮らし』(2012年)から4年後に刊行された続編。夫しゅういち氏が入院し、90歳で亡くなり、夫婦二人の暮らしから一人の暮らしへと変わる。
それでも、雑木林とキッチンガーデンのある木造平屋の家での営みは、変わらずに続いていく。
干し柿一つ、つくるのだって。くり返し、くり返しやらないと、うまくできない。だから、また来年もつくってみようと思うし、うまくできないからのおもしろさがあるのね。(英子)
病院での入院の日々は、いつどんな検査をするかわからないから、恐怖の日々だったって。退院した三か月後にまた検査しますからと言われましたけど、断ったの。このままずっと、平穏に暮らしたほうがいいって。(英子)
直すとかえってお金がかかる仕組みになってしまった世の中は、不自然ですよ。経済が回るよう、使い捨てを主流にしようとしてね。昔のものはとにかく丈夫で長持ち。そして、道具を自分の手で育てていくという楽しみがあるでしょ。(しゅういち)
炊事をやっていたねえやが「なんでも、手間ひまかけてつくったものがおいしいのよ」と言っていたけど、ほんとうにそうだなって。その言葉がいまだに耳に残っているから、梅を漬けたり、粕漬をつくったり、土鍋で豆を煮たり。(英子)
読んでいると、しーんと気持ちが穏やかになる。料理や家事といった日々の行いが、私たちの身体や心を整えていることにあらためて気づかされる。
巻末のプロフィールによれば、この本が出て2年後の2018年に英子さんも90歳で亡くなられたそうだ。
2016年12月5日1刷発行、2019年6月25日14刷発行。
自然食通信社、1800円。