2021年09月18日

西山純子『新版画作品集』


副題は「なつかしい風景への旅」。

大正から昭和初期にかけて、版元の渡邊庄三郎を中心に生み出された近代的な浮世絵「新版画」。川瀬巴水、吉田博、伊東深水ら多くの作家が誕生し、海外でも人気を博した。

その代表的な作品を「夜」「雪」「水辺」「富士と桜」といった内容別に収め、解説を施した一冊。作家紹介なども充実していて、新版画の良い入門書となっている。

新版画は和紙という優れた、特殊な媒体と水性顔料、超絶した彫りと摺りの技、そして近代に生きた作家の視覚や感性が、きわめて高い完成度のなかに融合した芸術世界である。
浮世絵や新版画の摺りの現場は、実に水気が多い。紙はあらかじめ湿らせておくし、顔料にも大量の水が使われる。(…)新版画は、日本の湿潤な風景を描くに実にふさわしい手法なのである。
新版画が外国人との仕事から出発したことはとても重要である。和筆を初めて持つ人の線と色を浮世絵の彫摺にあわせる試みが、職人たちを因習から解放し、新たな造形への踏切板となったからである。

新版画にかなり興味が湧いてきた。
美術館に実物の絵を観に行こうと思う。

2018年3月10日、東京美術、3000円。

posted by 松村正直 at 19:50| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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