旭川郊外のイカウシ(当麻町伊香牛)に暮らす著者が、山小屋での生活や四季の移り変わり、季節ごとの食べ物などについて記したエッセイ集。
雪が解けて水が流れ始める「春」、畑の野菜や草が育つ「夏」、豆や芋や果物を収穫する「秋」、そして一面の雪に閉ざされる「冬」。
実から地について育ったものの成長の安定感、周囲にあるものとのなじみ方は、買って来て植えた苗花とは全く違う。そういうものから私が学ぶ事は、計り知れない。
十年、二十年、毎日好きな食器で楽しく食事をする人と、間に合わせの貰い物で済ませている人との感覚の違いは大きいと思うのだ。
自分たちで作った野菜のピクルスや塩漬けや貯蔵した豆とジャガイモで食卓が用意される時、私たちは種蒔いた春を、暑くて忙しくてぶっ倒れた夏を、収穫した秋をお皿の中に再現することができる。
雪かきをする時はまず、お風呂をわかしてから作業にとりかかる。なぜかというと、汗だくになってしまうからだ。マイナス二十度の中で汗だくになる(…)
こういう生活に対する憧れが、少しずつ私の心に芽生え始めている。まあ、実現はできないと思うけれども。
2007年7月25日、自然食通信社、1700円。