映画「コーヒー&シガレッツ」には、文化的・社会的な背景がわからないとピンと来ないシーンがけっこうある。さらに2003年製作という時代背景も踏まえなくてはならないのだろう。
例えば、4つ目のエピソード。少年が食べている豆菓子(春日井製菓の「グリーン豆」)を指して、父が友人に「中国産だ」と言う。少年はそれに対して首を振り、無言でつり目のポーズをしてみせる。それを見て父は「日本産か」と答える。
つり目がアジア系への蔑視表現というのはわかるのだが、中国と日本の差をそれで表しているのはどういう意味なのか。そのあたりが今ひとつわからない。
もう一つ。9つ目のエピソードでは、登場人物の片方が会話の中で「tree hugger」という言葉を発したことから、二人の間が気まずくなる。字幕には「地球にやさしい人」と出ていたが、どうもしっくり来ない。ネットで調べてみると、「tree hugger」(樹木を抱く人)は、かつて環境保護派に対する蔑称として使われていた言葉だとわかった。
つまり「tree hugger」の一言で、二人の環境保護に対するスタンスの違いが露呈してしまったわけだ。これも原語のニュアンスや文化的背景を知らないと、なかなか理解できない部分と言っていいだろう。
もちろん、どんな映画にもそうした要素はあるわけだが、「コーヒー&シガレッツ」は特にその傾向が強い。何も知らなくても十分に(私には)面白いのだけれど、おそらくアメリカ社会や文化に詳しい人に解説してもらうと、さらに何倍も楽しめるのだろうと思う。
2021年08月30日
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