2021年08月12日

大木毅『独ソ戦』(その1)


副題は「絶滅戦争の惨禍」。

2020年新書大賞を受賞し累計12万部に達した話題の本。第二次世界大戦におけるドイツとソ連の攻防を、軍事・外交・経済・思想など多面的な観点から概説している。

「独ソ戦の実態に迫る、定説を覆す通史!」と帯に記されているが、そもそも独ソ戦の「通説」がどういうものかを知らない読者が、私も含めて多いのではないだろうか。それでも、著者の筆力と博識によって十分に満足できる一冊となっている。

「人類史上最大の惨戦と言っても過言ではあるまい」と書かれているように、ヒトラーの率いるドイツも、スターリンの率いるソ連も、互いにイデオロギーに基づいた容赦のない収奪、殺戮を行った。

五七〇万名のソ連軍捕虜のうち、三〇〇万名が死亡したのだ。実に、五三%の死亡率だった。
スターリングラードで捕虜となったドイツ軍将兵九万のうち、戦後、故国に生きて帰ることができた者は、およそ六〇〇〇名にすぎなかった。

また、今回強く感じたのは、現在の世界地図との違いである。今の地図ではドイツとロシアの間に様々な国が存在するが、独ソ戦当時はバルト三国はソ連に併合され、ポーランドも分割され、ドイツとソ連が国境を接する状態になっていたのだ。戦いの主要な舞台となるミンスク、キエフ、ハリコフなども、今ではベラルーシやウクライナの都市になっている。

2019年7月19日第1刷発行、2020年2月5日第10刷発行。
岩波新書、860円。

posted by 松村正直 at 10:22| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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