2021年08月09日

高橋博之ほか『人と食材と東北と』


副題は「つくると食べるをつなぐ物語 『東北食べる通信』より」。

2013年に創刊された食材付きの情報誌「東北食べる通信」は、生産者と消費者をつなぎ、毎月食の物語を届けてきた。その中から20篇を取り上げてまとめた一冊。

食べる通信は、私たち消費者が「食べものをつくる世界」に参画する回路を開いた。海や土などの自然が生み落とし、哲学や思いを持って生産者が育てる食材が食卓に届くまでのプロセスを共有し、いろいろな形で参画していく。

わらび、にんにく、里芋、桃、胡桃、牡蠣、わかめ、ハタハタ、じゅんさい、赤豚、短角牛など、様々な食材が登場する。カラー写真が豊富で、それぞれの食材の調理方法も載っていて楽しい。

台風の被害で野菜が高騰しているというニュースが流れると、大抵の場合、家計を直撃し消費者が困っている報道になるが、農家の苦しい実態が伝えられることは少ない。
立体農業とは、樹木や家畜を取り入れた循環型農業のことで、広大な面積がなくても農民が十分に食べていけるよう、地面だけでなく空間も利用して立体的≠ネ生産性がデザインされている。
地域から持ち出せる価値では都市住民を感動させられない。外に持ち出せない、その場にあるからこそ生まれる価値に触れるからこそ、本当に心を打つ。

都市部に住みスーパーで買った食材を消費するだけの存在となっている私たちに、多くの問い掛けをしてくれる内容であった。

2021年5月20日、オレンジページ、2300円。

posted by 松村正直 at 08:45| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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