2021年08月08日

石坂啓『ハルコロ』(1)(2)



原作:本多勝一、監修:萱野茂。
1992年に潮出版社から刊行された単行本を文庫化したもの。
長年読むことのできなかった名作が、約30年ぶりに復刊された。

舞台はまだ和人の進出が始まる前のアイヌモシリ(北海道)。オペレ(おちび)と呼ばれていた娘が「ハルコロ」という名を与えられ、一人前の女性として成長していく物語である。

アイヌの風習や文化、口承文芸のユーカラやウエペケレなども交えつつ、アイヌの人々の暮らしを生き生きと描き出している。

(1)には1992年版の本多勝一の解説と、中川裕(アイヌ語研究者、千葉大学名誉教授)の文庫版解説、(2)には1992年版の萱野茂の解説と、石坂啓の文庫版あとがきが載っている。多くの人の力によって誕生し、そして今回復刊された作品と言っていいだろう。

研究者が論文を書いても、その影響は研究という閉じた世界の中に限られる。それが社会的な広がりを持つためには、より多くの人の目に触れる映画や漫画といった手段によることも重要である。

現在大ヒット中の漫画『ゴールデンカムイ』の監修も行っている中川の言葉である。この作品を通じて、さらにまた多くの方がアイヌに関心を持つようになるといいなと思う。

2021年6月15日、岩波現代文庫、各1300円。

posted by 松村正直 at 11:41| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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