2021年08月05日

姜尚美『京都の中華』


2012年に京阪神エルマガジン社から刊行された単行本に加筆・修正して文庫化したもの。

他の町とは違う独自の変化を遂げた京都の中華料理の歴史や魅力、店ごとの特徴などを記した本。「京都の中華」というジャンル(?)を新たに打ち立てた一冊だ。表紙の酢豚を見ても、一般的な酢豚との違いは歴然としている。

よく言われるのは、お座敷に「におい」を持ち込むことを嫌う祇園などの花街で育った、にんにく控えめ、油控えめ、強い香辛料は使わないあっさり中華、という特徴。
中華料理は東京や横浜などでいったん「日本化」された。遅咲きの「京都の中華」は、その「日本化された中華」の波を浴びつつ、今度は、独自に「京都化」していくのである。

取り上げられている店は、「鳳舞系」「盛京亭系」と呼ばれる二大系譜を中心に、「草魚」「盛華亭」「蕪庵」「芙蓉園」「鳳飛」「八楽」「ハマムラ河原町店」「ぎおん森幸」など。カラー写真も豊富で、すぐにでも食べに行きたくなる。

著者は、以前読んだ『何度でも食べたい。あんこの本』の方。
https://matsutanka.seesaa.net/article/474867954.html
食べものと京都に対する愛情が深い。

文庫版付録として、老舗料亭[菊乃井]の主人との対談が載っているのだが、これがすこぶる面白い。和食と中華では全く違うように思うけれど、京都においては限りなく似てくるのだ。

2016年12月10日初版、2021年5月31日4刷。
幻冬舎文庫、800円。

posted by 松村正直 at 08:08| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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