2021年07月19日

西尾克洋『スポーツとしての相撲論』


副題は「力士の体重はなぜ30キロ増えたのか」。

ブログ「幕下相撲の知られざる世界」が評判を呼び相撲ライターとなった著者が、30の質問の答える形で相撲の仕組みや魅力について記した一冊。

大相撲というと90年代のイメージを持たれている方が多いのですが、当時から30年近く経過するとイメージとは異なる実態があります。

と、まえがきにある通り、「寄り切りから押し出しへ」「平均130kgから160kgへ」「中卒叩き上げから大卒へ」「国民的スポーツからマイナースポーツへ」といった変化や、その理由がわかりやすく説明されている。

相撲というのは珍しい競技で、互いの呼吸の合ったところで勝負が始まります。よく誤解されますが、行司さんが「ハッキヨイ!」と声を上げるのは腕相撲で言うところの「レディー、ゴー!」に当たる立ち合いの合図ではありません。
相撲のもう一つの大きな特徴として、ルールのわかりやすさが挙げられます。土俵の外に出るか、足の裏以外が地面に付いたら負け。これだけです。
現在の18時打ち出しという時間は、プロスポーツの興行として捉えると改善の余地があるように思えます。社会人の大半が平日の18時まで仕事をしているので、リアルタイムでの相撲観戦ができないからです。
年収100万円の幕下力士が120人いる中で、年収1000万円以上の十両に上がれるのは毎場所4人程度。

ちょうど昨日、大相撲名古屋場所が白鵬の45回目の優勝で幕を閉じた。本書でも「Q9 白鵬がこれほど長い間、これほど強い理由を詳しく知りたいです。いくらなんでも強すぎませんか?」といった質問があり、まさにタイムリーな内容だ。

白鵬が休場すると誰が優勝してもおかしくないとはいえ、結局のところ絶好調の白鵬を上回る力士はいまだにいないのが実情です。

まさに著者の予想通りの結果になったという感じである。

2021年6月30日、光文社新書、880円。

posted by 松村正直 at 07:09| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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