2019年に幻冬舎から刊行された単行本の文庫化。
数学者と数学に興味を持った著者が、十数名の数学者・数学愛好者にインタビューをしてまとめたドキュメンタリー。一般にはほとんど知られていない数学者の日常が浮かび上がってくる。
数学は「これを解け!」の積み重ねではなかった。「なぜ?」の積み重ねなのだ。
数学は、言語も国も時間すらをも飛び越えて人間と人間を繋ぐ、世界へ開いた扉でもあるのだ。
型にはまったやり方を押しつけても、数学はやっていけない。自分らしく自由であることを、数学は人類に望んでいるのである。
著者は数学者の話を、巧みな喩えなども使って咀嚼し、数学の魅力に迫っていく。その話を引き出す力には驚かされる。
楽しそうな面もある一方で、厳しい世界であるのも間違いない。
「この人はこのぐらいのレベルだな」というのは、少し数学的な議論をすればすぐにわかってしまいます。学生とでもそうだし、数学者同士でもそう。(渕野昌)
まあ、多かれ少なかれ、こういう側面はどの世界にもあるのだろうけれど。
2021年4月10日、幻冬舎文庫、710円。