2021年06月23日

宇野重規『民主主義を信じる』


2016年から2020年まで「東京新聞」に連載された「時代を読む」51篇をまとめた本。

著者はこの時期を「トランプ大統領の大統領当選に始まり、その政権の終わりに至る、世界の民主主義にとって「危機の五年間」」(あとがき)と記している。

民主主義は決定過程を公開・透明化し、関係する誰もがそこに参加することを可能にする。より多くの人々が国や世界の政治を「他人事」ではなく「自分事」として捉え、当事者意識とそれに基づく責任感を持つことを要請する政治体制でもある。そのような民主主義は、一時的に混乱したり、判断を誤ったりすることがあっても、長期的には自らを修正し、多様な実験を可能にする。

「公開・透明化」にしろ、「当事者意識」や「責任感」にしろ、現在の日本や諸外国でこうした理想が実現されているかと言えば、かなり心許ない。でも、「長期的には自らを修正し」という部分こそが、おそらく民主主義にとって一番の強みであり、大切な点なのだろう。

Iターン者について触れたが、この町の特徴は地域の外からの人材をいかすことにある。島の出身者でなくても、他の場所で学び働いてきた人の知識や経験を、最大限にこの島のためにも発揮してもらう。
一つは外国人労働者を積極的に受け入れる道である。もし、その道を選ぶとすれば、より良い人材に、長期的に安定して働いてもらうための環境を整備する必要がある。(略)子どもの教育を含め、より良い受け入れの仕組みを整備すべきである。

上は隠岐の海士町について触れた2019年の文章で、下は外国人労働者の受け入れに関する2018年の文章だ。

今回この本を読んで気が付いたのは、過疎化の進む離島(隠岐)の振興策と、少子高齢化の進む島国(日本)の未来像は、同じ構造にあるということだ。海士町の掲げてきたキャッチフレーズ「最後尾から最先端へ」は、なるほど、こんなところにもつながっていたのである。

2021年2月11日、青土社、1400円。

posted by 松村正直 at 21:27| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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