第28回萩原朔太郎賞受賞。
15篇の作品を収めている。
何年間も庭に打ち捨ててあった三輪車を、がらがらと道路に引きずり出し、どこということもなく、ペダルをこぎ始めた。夜が明けるまでに、行き着く場所を考えていた。
(「サンタ駆動」)
スナック『真紀』の飾り窓が、
荒く息をするように光っては消える。
光だと思ったものは、真っ白な男の顔だった。
(「篠の目原を行く」)
目が覚めて、暗い布団の中で、
私は今、
自分が26歳なのか
62歳なのか分からなくなった
(「夜の思い出」)
夢の中の話のような不思議な世界が次々と展開していく。
これからも現代詩をいろいろと読んでいきたい。
2020年6月30日 新装版、思潮社、2000円。