筑波大学の学生を中心に活動している「つくば現代短歌会」の機関誌の創刊号。
内容は、ゲストの郡司和斗(かりん)と平出奔(塔)の作品とロングインタビュー、会員の作品(短歌・俳句)、そして会の沿革、会員紹介。全174ページ。
ロングインタビューは全65ページというかなりの分量。連作の作り方についての話が特に興味深かった。
郡司 僕は連作というものが本当に存在するのか疑っている派なので、構成とかテーマとかを最初から決めてそれを浮かび上がらせるように作るというよりかは、できるだけ素でできたものを輝かせたいですね。ただ、どうしてもそれだけでは連作にならなかったりするので、(…)素でぽろっと出てきた良い歌を輝かせるために、歌を探しに行くというようなことはやりますね。
平出 たまに出てくるなんかよくわかんないけどいいねみたいな歌も大切にしたいですね。そういうときに役立つのが、百首会みたいな無茶で(笑)。なぜ百首会のときにつくった5首を軸にしたかというと、百首会のときに生まれる歌って何がいいのかよくわかんない歌が多いと思って。でもすごくいい歌だとも思っていました。
以下、会員の短歌作品から。
あなたはあなたの窓辺に鶸を棲まはせるわたしはそればかり
を見てゐた 橋本牧人
だれしもがいちりんに佇つ曼珠沙華この世に肋骨(あばらぼ
ね)を咲かせて 橋本牧人
優しい声を切り捨てた日に文学はうつ伏せでしかスキャンで
きない 荒木田雪乃
炊飯器の縁に貼りつくものたちは痛い剥がして食べてください
小川龍駆
なんとなく出掛けて気づく欲があり欲から遠ざかるための風
豊冨瑞歩
ふりかけをかけるのが下手な僕のこと否定しないでおこう春
めく 林さとみ
水道水水道管から絞り出す 「海だった」なんて泣かないで、
朝 神乃
2018年から活動を続けて、今回が初めての機関誌の発行とのこと。
来年以降も順調に刊行が続きますように!
2021年5月16日、600円。