天安門事件が起きた1989年、私は大学1年生だった。6月4日の事件の報道を受けて、学内では抗議集会が盛んに開かれていた。
集会で話を聞いていた時に誘われて、この時、生まれて初めてデモに行った。街頭でデモ行進して、その後、日比谷公園で行われた集会に参加した。
もともと祖父が思想的に中国との交流に関わった人で、実家には赤い表紙の『毛主席語録』などが置いてあった。そうした環境で育った影響もあって、中学生の時に中国訪問ツアーに参加したこともある。1985年のことだ。
北京と上海を訪れて、万里の長城や故宮博物院などの有名観光地を回った。とにかく自転車が多かったことが印象に残っている。お土産に、人民解放軍の防寒帽、健身球、コルク細工、東条英機に関する本などを買った。
『八九六四』の登場人物の一人は、
彼は陝西省出身で、北京市内の大学に進学。一年生の一九歳で八九六四を迎えた。
と書かれている。まさに私と同年代の学生たちが、この天安門事件には参加していたのである。
2021年5月10日、角川新書、1000円。