2009年に文春新書より刊行された本に加筆・増補して文庫化したもの。日本各地、世界各地の珍しい食べ物あれこれを紹介している。
登場するのは、フグの卵巣の糠漬け(石川県)、サンショウウオ(福島県檜枝岐村)、おたぐり(長野県伊那地方)、メダカの佃煮(新潟県)、カンガルー(オーストラリア)、鶏のとさか(フランス)、みかんご飯(愛媛県)、サルミアッキ(フィンランド)、ワラスボ(有明海)など56点。
内臓は肉よりも、ナトリウム、鉄分、ビタミン類がはるかに多い。肉食獣は、肉よりも内臓のほうがうまくて滋養に富むことを知っているに違いない。
アメリカの下院は二〇〇六年に、ウマを食肉のために屠ることを禁止する法案を可決しているのである。
白樺の樹液は、ロシアや東欧、北欧、中国、韓国などで飲用にされている。日本でも、アイヌがタッニワッカ(白い肌の木の液)と呼んで飲んだという。
トド肉本来の味を感じたかったら、ストレートに焼いて食べるといい。まず襲いかかって来るのは濃密な青魚の臭いだ。トドが魚を食するからだろう。
何を食べて何を食べないか、何を好み何がタブーになっているかは、地域や国によって様々である。私たち(?)が「奇食」と思うものを通じて、食や文化の多様性が見えてくる。
私たちの体は食べたものでできている。だからこそ、食べ物に関しては譲れない部分も大きいのだろう。食べるという行為が人間にとってどんな意味を持つのか、深く考えさせられる。
2021年4月10日、ちくま文庫、800円。