第57回現代詩手帖賞を受賞した作者の初めての詩集。
第71回H氏賞受賞。
ふだん現代詩を読むことはあまりないのだが、葉ね文庫で見かけて購入した。
わたしは今まで、軽やかな田園というものを見たことがなかった。胸に広がる水紋は、どれもひとしく苦しい。(「田園」)
試合は閉じられる
すると大きい川が現れて
球児たちが一斉にその縁に
歯のように並び
川に向かって一礼をした
(「sad vacation」)
四川料理店で女性が、昼に向かって口笛を吹いている。曲の名を尋ねたら、水禽、と言って笑った。(「野鳥のこと」)
息を吹きかければ
硝子窓が曇る
生きることは衣服のように白い
(「雪」)
心惹かれる魅力的なフレーズがいっぱいある。言葉と言葉のつなぎ方やイメージの展開の仕方など、現代詩から学べることはたくさんありそうだ。
2020年11月30日、思潮社、2000円。