本に関わる仕事を長く続けている著者が、本屋の現状や将来について考察した一冊。
「ていぎする」「くうそうする」「きかくする」「どくりつする」の四章から成っていて、書店員へのインタビュー、架空の本屋の物語、本を売るための企画など、様々な角度から本屋の今後について迫っている。
本が売れない時代だからこそ、新しい読者を増やさなければならないのは当然のことだが、そもそも本を読まない人は本屋に足を運ばない。本屋の中で奮闘することが重要なのは言うまでもないが、本が本屋の外に出向いていくことも同じくらい重要なことだ。
人はその店で買い物をすれば、その店のことをよく覚えているものだ。逆に、買わなかった店のことはすぐに忘れてしまう。だから、お客さんに再来店してもらおうと思えば、何でもいいから一冊買ってもらうことが大事なのだ。
今なんとなく感じているのは、「本を売ること」だけが本屋を定義するものではない、ということだ。本屋という名称は「場所」をさす言葉ではなく、「人」をさす言葉なのではないだろうか。
本屋を取り巻く状況は年々厳しくなっていくばかりだ。著者が2013年の立ち上げから2016年まで勤めた「マルノウチリーディングスタイル」も、先月閉店した。本屋の存在しない世界が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。
2016年5月1日、書肆汽水域、1200円。