松浦漬は鯨の「かぶら骨」(上顎の骨の内部にある軟骨組織)を酒粕に漬けたもので、佐賀県呼子の名物になっている。
原材料名を見ると、ちゃんと「鯨の蕪(カブラ)骨」とある。
蒼海(あをうみ)の鯨の蕪骨(ぶこつ)醸(か)み酒のしぼりの粕に浸(ひ)でし嘉(よ)しとす
北原白秋『夢殿』(昭和14年)
北原白秋は大正14年夏の樺太旅行の際に、この松浦漬を製造販売する「松浦漬本舗」の創業者の息子と知り合いになり、昭和4年に呼子を訪れた。
白秋の樺太旅行記『フレップ・トリップ』(昭和3年)を読むと、松浦漬について「鯨ん鑵詰ばこさえとる。全国に出しますもんな」「鯨ん骨ですたい。輪切がえらかもんな。そりゃ珍しか」といった会話が交わされている。
缶詰を開けると、こんな感じ。
酒粕に唐辛子がすこし混ざった中に「かぶら骨」が入っている。
かぶら骨を取り出して水洗いすると、こんな感じ。
薄切りにされてクラゲみたいな食感。お酒のアテにいいのだろうな。
有限会社松浦漬本舗は明治25年の創業。
https://www.matsuurazuke.com/
一缶1296円(税込)とけっして安くはないが、120年以上続く伝統の味である。