2021年04月21日

磯辺勝『文学に描かれた「橋」』


副題は「詩歌・小説・絵画を読む」。

橋が好きな著者が、橋の登場する文学や絵画について、ゆるやかな連想を紡ぎつつ記したエッセイ。ジャンルを横断した切り口が珍しい。

書店でパラパラと見ていたら、最初に「幣舞橋を見た人々」として啄木の名前が挙がっていたので買う。

取り上げられているのは、林芙美子、徳富蘆花、エドモン・ゴンクール、松尾芭蕉、藤牧義夫、ランボー、平岩弓枝、井原西鶴、ヘンリー・ジェイムズ、釈迢空、中原中也、川端龍子など。まさに縦横無尽といった感じ。

橋があって、そこになにかじわりとにじんでくるもの、もしかすると、その橋を見たり渡ったりした人々の、心の堆積のようなものなのかもしれない。そういうものが私を引きつけるのだ。
私は客観的に存在するモノとしての橋ではなく、人の心に映り、それぞれの人の心のなかで生き、意味をもつ橋があるのだということを理解するようになった。

実は私もけっこう橋が好き。
橋を詠んだ歌がたくさんある。

明け方の淡い眠りを行き来していくつの橋を渡っただろう
                 『駅へ』
反り深き橋のゆうぐれ風景は使い込まれて美しくなる
                 『やさしい鮫』
夏の午後を眺めておれば永遠にねじれの位置にある橋と川
                 『風のおとうと』

2019年9月13日、平凡社新書、880円。

posted by 松村正直 at 17:02| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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