2021年04月08日

さらに軍用鳩の話

大正14年刊行の『陸軍歩兵学校案内』(国会図書館デジタルコレクション所蔵)にも、軍用鳩の話が3ページにわたって載っている。

第一次世界大戦(とは言わず「欧州戦」と書いている)において軍用鳩が用いられた話から始まって、次のような説明が続く。

鳩通信は電信電話の如く、敵火の為に破壊せられたり、敵に窃(ぬす)み取られる事が少なく、毒瓦斯に対しても強く、砲煙弾雨の中を勇敢に飛翔して、他の通信機関の使用されない場合に使用して、通信の目的を達成する事が出来るから、重宝なのであります。
当校に飼育して居ります鳩は、一分間に千米位の速度で、八十里以内の通信に堪へますが、夜間は二十五里以内、往復通信で十五里以内に使用する事が出来ます。
国内伝書鳩の総数は僅かに五万羽に満たぬ有様で、これを欧米列国の数百万乃至一千万羽なるに比較して遥かに遜色あるのは、誠に遺憾千万であります。

「五万羽」でも十分多いように思うのだが、欧米では「数百万」〜「一千万羽」も存在していたと知って驚いた。伝書鳩、すごいな。

移動鳩車通信では、新たな位置に到着して後一日で(鳩を飛翔さして地形鳩車の位置等を覚へさす)一里位の範囲の通信が出来、後時日を経るに従つて、十五里以内の通信を行ふ事が出来ますが、一般に雨雪天の時は通信距離が減少致します。

なるほど、「鳩車」というのは単に鳩を運搬するためのものではないのか。基地の鳩舎で行うのが言わば「固定電話」であるのに対して、鳩車は戦場で「携帯電話」的な役割を果たすものだったわけだ。

posted by 松村正直 at 09:03| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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