2021年04月07日

三浦しをん『ぐるぐる博物館』


2017年に実業之日本社より刊行された単行本の文庫化。

全国10館(+α)の博物館を訪れて博物館の魅力について記したルポエッセイ。軽快な文章で楽しく読み進められる。

登場するのは、茅野市尖石縄文考古館(長野県茅野市)、国立科学博物館(東京都台東区)、龍谷ミュージアム(京都市)、奇石博物館(静岡県富士宮市)、大牟田市石炭産業科学館(福岡県大牟田市)、雲仙岳災害記念館(長崎県島原市)、石ノ森萬画館(宮城県石巻市)、風俗資料館(東京都新宿区)、めがねミュージアム(福井県鯖江市)、ボタンの博物館(東京都中央区)。

「島嶼効果」とは、外敵が少ない島において、ゾウやシカなどの大型動物はミニサイズになり、ネズミやトカゲなどの小型動物は巨大化する、という現象なのだそうだ。
坑内で石炭の運びだしに馬を使っていた時代には、馬もケージに乗って竪坑を降りたのだそうだ。
鯖江は第二次世界大戦後、軍の跡地が工業用地に転用されたので、県内でも特にめがねづくりが盛んになって、いまに至る。

どれも個性的な博物館(と学芸員さん)ばかりで、知らない話が次々と出てくる。実際に行ってみたくなる所ばかり。

人間の好奇心と、最新の研究成果と、知恵や知識と、あとなんか常軌を逸した(失敬)蒐集癖や執着や愛。そういった諸々の分厚い蓄積を、楽しく我々に示してくれるのが博物館なのだ。

なるほど。博物館と言うと「モノ」のイメージが強いけれど、結局は「人」なんだな。

2020年10月15日、実業之日本社文庫、680円。

posted by 松村正直 at 22:02| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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