2021年04月05日

阿古智子『香港 あなたはどこへ向かうのか』


以前、アップリンク京都で映画「香港画」を観た時にフロントで購入した本。
https://matsutanka.seesaa.net/article/480223069.html

その前に「私たちの青春、台湾」という映画も観ていて、このところ香港や台湾の情勢に関心が深まりつつある。
https://matsutanka.seesaa.net/article/479846925.html

この本は、香港大学への留学経験を持つ著者が2019年12月に香港を訪れて、かつて同じ寮で暮らしていた友人たちにインタビューするところから始まる。

その後、2020年1月に総統選が行われる台湾へ。香港・台湾の取材を通じて著者は、デモや暴力のあり方、メディアや教育の役割、対立や分断を深める社会の中でどのように対話や自由を守っていくことができるか、といった問題を考察していく。

情報化は私たちの暮らしを便利にし、コミュニケーションを促進してくれたが、同時に、あらゆる場面に「敵」の存在がちらつくようになった。実際には、「敵」の輪郭をくっきりと描くことなどできないにもかかわらず。
香港には、日本による占領、イギリスによる植民地支配、そして経済大国化した中国、という外部の力が常に働いてきた。日本は「無色の他者」や「民族の敵役」として、香港人の意識に現れたり、消えたりしている。
監獄には自由がない。しかし、監獄の外も決して無条件に自由が保障されているわけではない。自由とは、自らがどうありたいのかを、他者との関係を調整しながら模索し、決断していくプロセスだ。

現在の香港の情勢を考えるには、2014年の香港の雨傘運動や台湾のひまわり運動、さらには1989年の中国の天安門事件までも視野に入れる必要がある。それは同じ東アジアの一員である日本にとっても、決して他人ごとではない話なのだ。

2020年9月30日、出版舎ジグ、1500円。

posted by 松村正直 at 23:38| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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