ところが、今回トークイベントのために再読していて気が付いたのだが、実は制作年代順でない部分がけっこうある。第2歌集以降と比べると、もっとも制作年代順ではない歌集かもしれない。
T
「フリーター的」 1999年角川短歌賞次席
「函館 一九九六」
「アルバイト募集」 1999年12月号「塔」作品特集
U
「グランメール春日201号」 2002年2月号「塔」風炎集
「福島 一九九七」
「天神橋」
「兎雲」
「石塀」
「あなたがいた夏」
「砂浜」
「未婚の父」
「湖」
「木登り」
「梅酒」
V
「ウォーター感覚」 2000年歌壇賞候補作
「大分 一九九九」
「ストロー」
「秋晴れ」
「睫毛」
「鳥居を渡る」
「墓石」
「結婚式」 2000年6月号「塔」作品特集
「靴箱」 2000年角川短歌賞候補作
歌集には1996年から2000年までの作品が収められているのだが、このように1999年・2000年に詠んだ連作を要所要所に配置した構成となっている。
それらは新人賞への応募作など、もともと連作として詠んだものばかり。それ以外の新聞・雑誌への一首単位の投稿歌や「塔」の月例作品が制作年代順にならんでいるわけだ。
全体として、函館・福島・大分と転々としてきたことや、フリーターの一人暮らしから結婚へという流れがストーリー仕立てで(わかりやすく)提示されている。その点が良くも悪くもこの歌集の大きな特徴になっているのだろう。
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