副題は「あの美味を生むのはどんな土地なのか」。
著者の名前は「かねだ」ではなく「きんだ・あきひろ」。
米、酒、味噌、醤油、茶、ダシ、漬物、干物、果物といった和食に欠かせない食材が、日本各地にどのような景観を生み出してきたのかを考察した一冊。写真も豊富でわかりやすい。
日本海沿岸の港町や瀬戸内海沿岸の港町などにも、大阪に見られるような、とろろ昆布などの昆布加工業が発達している。太平洋側のカツオ節の道の景観とは対照的な、昆布の道の景観が日本海側に点在し、さらに瀬戸内海沿岸にも点在するのである。
スグキ漬け、千枚漬け、柴漬けの三種の漬物は、いずれも乳酸菌発酵の漬物である。京都の伝統的な漬物を代表するものであるが、京の三大漬物と呼ばれることもある。
今は人気のない山中に一、二本の柿の木が見つかることがある。調査によってしばしば、そこにかつて存在した集落が廃村となった痕跡、あるいは廃屋の跡を確認することができる。
一つ一つの話は面白いのだが、ところどころ著者の個人的な話が挟まれるのが気になった。オーストラリアやイタリアのワインの話などは要らなかったのではないか。
2020年12月15日、平凡社新書、860円。