農作業をしている農民がかぶっているものを、バードの原文がhatだということで高梨氏や時岡氏は帽子と訳します。(…)しかし、正しくは前者は菅笠(…)、帽子と訳したのでは明治という時代も日本の文化・伝統も浮かび上がってきません。
この、「帽子」と訳すか「菅笠」と訳すかという問題は、なかなか難しい。もちろん文化的な背景を踏まえれば「菅笠」が正しいのだけれど、外国人がそんな言葉を知っているはずもない。
個人的には山口雅也『日本殺人事件』のような、外国人の見た不思議なニッポンの姿も好きなので、農民が(西洋的な)帽子をかぶっている姿が一瞬思い浮かぶのも悪くないように思う。
すげ笠は、明治の人がかぶっていたかもしれませんが、ベトナムでは日差しが強いので道ゆく人が今もかぶっています。
日本人でも見ていてどこか懐かしい感じがしますし、
アジア圏でない人が笠の感じに惹かれるらしく、
空港などでお土産にかぶっている姿を見かけます。
われわれ何故か「外国人」といって想定するのはインドより向こうのヨーロッパ、と書いていたのは堀田善衛でした。
逆に、英訳の難しさを感じたことがあります。ある展覧会で、「華籠」(仏具)の英語表記が「flower basket」でした。普通の「花籠」ならこれで十分ですが、さらに何か単語を加えた方がよい気がしました。
コメントありがとうございます。確かに菅笠は日本だけのものではないので、「外国人」ではなく「欧米人」と書くべきでしたね。
>吉田達郎さん
英訳と言えば、リービ英雄著『英語でよむ万葉集』も印象的な本でした。「籠もよ み籠もち ふくしもよ みふくしもち」で始まる雄略天皇の歌の「籠」が「バスケット(basket)」、「ふくし」は「シャベル(shovel)」になるのです。当然と言えば当然の話なのですが、とても新鮮に感じました。