2021年03月10日

『イザベラ・バードと日本の旅』のつづき(1)

翻訳の言葉の問題について、もう少し。

農作業をしている農民がかぶっているものを、バードの原文がhatだということで高梨氏や時岡氏は帽子と訳します。(…)しかし、正しくは前者は菅笠(…)、帽子と訳したのでは明治という時代も日本の文化・伝統も浮かび上がってきません。

この、「帽子」と訳すか「菅笠」と訳すかという問題は、なかなか難しい。もちろん文化的な背景を踏まえれば「菅笠」が正しいのだけれど、外国人がそんな言葉を知っているはずもない。

個人的には山口雅也『日本殺人事件』のような、外国人の見た不思議なニッポンの姿も好きなので、農民が(西洋的な)帽子をかぶっている姿が一瞬思い浮かぶのも悪くないように思う。

posted by 松村正直 at 08:02| Comment(3) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

すげ笠は、明治の人がかぶっていたかもしれませんが、ベトナムでは日差しが強いので道ゆく人が今もかぶっています。
日本人でも見ていてどこか懐かしい感じがしますし、
アジア圏でない人が笠の感じに惹かれるらしく、
空港などでお土産にかぶっている姿を見かけます。

われわれ何故か「外国人」といって想定するのはインドより向こうのヨーロッパ、と書いていたのは堀田善衛でした。




Posted by boa noite at 2021年03月10日 17:29
松村さん、こんばんは。

逆に、英訳の難しさを感じたことがあります。ある展覧会で、「華籠」(仏具)の英語表記が「flower basket」でした。普通の「花籠」ならこれで十分ですが、さらに何か単語を加えた方がよい気がしました。
Posted by 吉田達郎 at 2021年03月10日 20:07
>boa noiteさん
コメントありがとうございます。確かに菅笠は日本だけのものではないので、「外国人」ではなく「欧米人」と書くべきでしたね。

>吉田達郎さん
英訳と言えば、リービ英雄著『英語でよむ万葉集』も印象的な本でした。「籠もよ み籠もち ふくしもよ みふくしもち」で始まる雄略天皇の歌の「籠」が「バスケット(basket)」、「ふくし」は「シャベル(shovel)」になるのです。当然と言えば当然の話なのですが、とても新鮮に感じました。
Posted by 松村正直 at 2021年03月11日 08:36
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