副題は「千年残したい日本の離島の風景」。
長年にわたって全国各地の島を旅してきた著者が、人口ひとりの島や古い風習が残っている島、無人島になってしまった島などを紹介しながら、島旅の魅力を語っている。
島には過去から継承された風習や在来知が色濃く残っている。加速度的に経済偏重に呑みこまれる社会において、島々はいにしえからの多様な知が息づく、最後の拠点なのかもしれない。
取り上げられているのは、黒島(長崎県)、前島(沖縄県)、多楽島(北海道)、オランダ島(岩手県)、由利島(愛媛県)など。あまり名前を聞いたことのない島が多い。
中でも印象的だったのは鹿児島県の新島(燃島)。「桜島沖に浮かぶ新島は、2019年に有人島に戻った。新島が有人になったのは、6年ぶりのこと」とある。
実は、この島には2013年に行ったことがある。当時は無人島になっていた。

桜島から望む新島。写っている船が行政連絡船「しんじま丸」。
この船で桜島(浦之前港)から新島に渡る。

島の道にはいたるところに草や木が生えていて、奥の方まで進むことはできない。

かつての桜峰小学校新島分校跡。1972年に廃校になった。
屋根瓦つらぬき通す木の力、草の力、蔦の力を生みたるちから
窓ガラスあらぬ窓よりのぞき見る学ぶ子も遊ぶ子もいない分校
『風のおとうと』
この新島に、また人が住み始めたのだ。
今の新島は生まれ変わったかのようだ。雑草はきれいに刈り取られ、島全体が明るくなった印象を受ける。
何とも感慨深い。
2020年12月30日、朝日新書、790円。