2021年01月14日

吉村昭『鯨の絵巻』


動物と関わって暮らす人々を描いた作品5篇を収めた短編集。

太地町の捕鯨の刃刺、鯉の養殖家、ヤマガラの飼育家、奄美のハブ捕り、牛蛙の漁り子と、かなり珍しい仕事をする男たちが主人公である。それぞれに抱えている孤独感や、生き物と向き合う時の緊張感などが印象に残る。

鯨は、セミ鯨、マッコウ鯨をのぞいて死亡すると海底に沈み、引揚げることは不可能になる。それを防止するために、鯨の死の寸前にその鼻の下をくりぬいて、あたかも牛の鼻に環を通すように綱を通す。

古式捕鯨のクライマックスとも言うべき「鼻切り」の場面。圧倒的な迫力だ。

1990年11月25日、新潮文庫、360円。

posted by 松村正直 at 10:08| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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