動物と関わって暮らす人々を描いた作品5篇を収めた短編集。
太地町の捕鯨の刃刺、鯉の養殖家、ヤマガラの飼育家、奄美のハブ捕り、牛蛙の漁り子と、かなり珍しい仕事をする男たちが主人公である。それぞれに抱えている孤独感や、生き物と向き合う時の緊張感などが印象に残る。
鯨は、セミ鯨、マッコウ鯨をのぞいて死亡すると海底に沈み、引揚げることは不可能になる。それを防止するために、鯨の死の寸前にその鼻の下をくりぬいて、あたかも牛の鼻に環を通すように綱を通す。
古式捕鯨のクライマックスとも言うべき「鼻切り」の場面。圧倒的な迫力だ。
1990年11月25日、新潮文庫、360円。