2021年01月07日

藤島秀憲歌集『オナカシロコ』

著者 : 藤島秀憲
ふらんす堂
発売日 : 2020-10-30

2019年1月1日から12月31日まで、ふらんす堂のホームページに連載された短歌日記(短歌+エッセイ)をまとめた第4歌集。エッセイも面白いのだが、とりあえず引用は歌だけで。

生簀(いけす)には馬面剝(うまづらはぎ)の二匹おり低カロリーの白身がおよぐ
仏壇に先を譲りてふたたびをエレベーターの待ち人となる
どんぶりをはみ出す海老の尻尾たち昼に混み合う店を行き来す
充血は充実ならず夜を明かし鏡にうつすひだりのまなこ
引用の歌を怪しみ書庫へ行く明治三十一年へ行く
さるすべりの百日間がはじまりぬ選挙のあとの町のそこここ
対岸のアマゾンの倉庫に窓見えず窓の見えねば働くひと見えず
かたゆでの玉子となりて満員の車両に秋のわたしが傾(かし)ぐ
いずこよりA氏は来るや駅前に落ち葉つもれば落ち葉を消しに
あっけない死ほど疑い深き死と刑事が写しし寝間居間わたし

1首目、まだ生きている魚を「低カロリーの白身」として見る視線。
2首目、エレベーターで運ばれる仏壇。死の順番を譲ったみたいだ。
3首目、大きな海老の載る天丼が名物のお店なのだろう。
4首目、「充血」と「充実」は確かに違う。徹夜明けの疲労が濃い。
5首目、明治31年刊行の歌集の歌。ちょっとしたタイムトラベル。
6首目、さるすべりは「百日紅」。夏から秋にかけて長く花が咲く。
7首目、倉庫の窓という具体を通じて、巨大物流企業の怖さを描く。
8首目、「かたゆでの玉子」がいい。身体や意識がこわばる感じ。
9首目、知らない誰かが、いつも落ち葉の掃除をしてくれている。
10首目、自宅で父が亡くなった時の回想。不審死として扱われる。

2020年10月19日、ふらんす堂、2000円。

posted by 松村正直 at 08:30| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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