287首を収めた第2歌集。
(だから「2や8や7」なのか?)
よれよれにジャケットがなるジャケットでジャケットでしないことをするから
一人カラオケ わたしはなぜかしたくなく君はときどきやっていること
待てばくる電車を並んで待っている かつおだしの匂いをかぎながら
公園のトイレに夜の皺が寄る わたしが着てる薄過ぎるシャツ
マスカットは秋の食べ物 秋になると色んなものの上にのるから
冬の街あるいてゆけば増強された筋肉みたいなダウンジャケット
パリなんてベタだと思う 君がいて靴の色まで夕方になる
公園の入り口にある桜の木 黒いダウンの子供も見てた
ファミレスが得意なのはハンバーグとパフェ わたしにも聞こえる虫の声
とうめいな袋の中でポッキーがきれいに横に並んでいるよ
1首目、「ジャケット」3回の繰り返しと言葉の大胆な省略が巧み。
4首目、「夜の皺」が印象的。皴からシャツへという流れも自然だ。
5首目、マスカット自体ではなくケーキやパフェに載るマスカット。
6首目、ダウンジャケットのもこもこしている感じが目に浮かぶ。
9首目、豊富なメニューの中にも、得意分野と不得意分野がある。
「コンビニ」「携帯」「iPhone」「TSUTAYA」「コーヒー」「エアコン」「シャツ」の歌が多い。カタカナが多い。算用数字が多い。一字空けが多い。
2020年12月8日、左右社、1600円。