ウェブメディア「cakes」2018年5月15日〜2019年6月5日掲載の文章をまとめたもの。
野外で採取した食材を普段の食用に活用する「野食」をライフワークとする著者が、様々な食材を食べてみた記録である。
取り上げられているのは、アメリカザリガニ、カミツキガメ、アオダイショウ、セミ、ハマダイコン、ノビル、ウシガエル、コブダイ、ドチザメ、シャグマアミガサダケ、ヤハズエンドウ、カンゾウタケなどなど。動物、雑草、魚、茸と何でも挑戦している。
中にはワックス魚を食べて下痢したり、ウツボに手を嚙まれて負傷したり、毒キノコを食べて中毒したりといった失敗例もある。それでも、著者は野食に情熱を傾ける。
どうして、そこまで夢中になるのか。
未知の食材を食べるときのドキドキ、そしてそれが美味だったときの喜び
身近な食材を食卓に用いて、エンゲル係数を下げる
災害やトラブルなどで流通や経済が破壊され、都市機能がまひしてしまったときも、明るく楽しく無理なく生き延びるための知識
食のフロンティアに立って後世のために新しい有用食材を見つけ出すことは、楽しいだけではなく、今後必ず役に立つはず
といった説明がある。趣味と実益とサバイバル術、そして謎の使命感といったところ。でもまあ、実際は理屈ではないのだろう。その野食へののめりこみようが、読んでいて楽しい。
2019年11月13日、平凡社、1400円。