2020年11月27日

「塔」2020年11月号(その3)

膝の痛み十段階の何番目?十段目ってどんな痛み 医師(せんせい)
                   山田精子

病院などで痛みの程度を尋ねられることがよくあるが、返事が難しい。十段階と言われても、その最大値がわかっているわけではない。

左肘でねじ伏せながらA3の図面コピーす月曜の午後
                   神山倶生

製本された図面なのだろう。A3は通常のコピー機では最大のサイズなので、左肘を使って画面に押し付けるようにしてコピーするのだ。

お互いの職場の愚痴を言い合って聞き合う隣の席 混ざりたい
                   田宮智美

展開の面白い歌。最初は自分たちの話かと思って読んでいくと、実は隣の席の話。しかも、嫌がっているのではなく仲間に入りたいのだ。

サボテンが親ならその子もサボテンであたまの先に頼りない棘
                   竹垣なほ志

まだ育ち始めたばかりのサボテンの苗。棘も生えたばかりで、柔らかいのだろう。それでも一丁前にサボテンらしさを醸し出している。

潮風の木かげに両脚投げ出してばーばと孫は蛸つぼを洗ふ
                   中村浩一郎

使い終った蛸壺を海辺で洗っている祖母と孫。「両脚投げ出して」という描写が良く、場面が目に浮かぶ。のどかな時間が流れている。

たいやきのはらわたなりしカスタード右手に受けて笑ってしまう
                   星亜衣子

カスタード入りのたい焼きにかぶりついたら、中身がドバっと溢れて、慌てて手で受けたのだ。「はらわたなりし」にユーモアがある。


posted by 松村正直 at 11:42| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。