本と旅についてのエッセイ集。
京都に行くなら京都の本を、沖縄に行くなら沖縄の本を、現地で読むとすっと身体に入る。でもミスマッチも時々はいい。持っていった本などそっちのけで、フランスのルマンで『コンビニ人間』を読んだり、(・・・)
本と旅は相性がいい。どちらも日常を離れた移動の時間だ。本に関する旅もあれば、旅に関する本もある。本と旅は深くつながっている。
25年にわたって雑誌「谷中・根津・千駄木」の編集人を務めてきた著者は、実に多くの引き出しを持っている。そこから様々な知識や体験を自在に取り出して、次々と結び付けていく。その手腕が何とも鮮やかだ。
私は高校の国語で習った『こころ』が好きじゃない。
こういう自己中心の男と付き合うと女は不幸になる。小奴もさんざん啄木に貢がされた。
その後に読んだ『眠れる美女』そして京都を美化した『古都』や『美しさと哀しみと』は好きになれなかった。
著者のもの言いは率直で、男性作家に対して時に厳しい。
2020年8月28日、産業編集センター、1100円。