2020年11月17日

森まゆみ『本とあるく旅』


本と旅についてのエッセイ集。

京都に行くなら京都の本を、沖縄に行くなら沖縄の本を、現地で読むとすっと身体に入る。でもミスマッチも時々はいい。持っていった本などそっちのけで、フランスのルマンで『コンビニ人間』を読んだり、(・・・)

本と旅は相性がいい。どちらも日常を離れた移動の時間だ。本に関する旅もあれば、旅に関する本もある。本と旅は深くつながっている。

25年にわたって雑誌「谷中・根津・千駄木」の編集人を務めてきた著者は、実に多くの引き出しを持っている。そこから様々な知識や体験を自在に取り出して、次々と結び付けていく。その手腕が何とも鮮やかだ。

私は高校の国語で習った『こころ』が好きじゃない。
こういう自己中心の男と付き合うと女は不幸になる。小奴もさんざん啄木に貢がされた。
その後に読んだ『眠れる美女』そして京都を美化した『古都』や『美しさと哀しみと』は好きになれなかった。

著者のもの言いは率直で、男性作家に対して時に厳しい。

2020年8月28日、産業編集センター、1100円。


posted by 松村正直 at 23:32| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。最後の森さんの記述についてちょっと感じましたことを。東山魁夷は、川端康成から「京都は今描いといていただかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいて下さい」と言われ、昭和43年に連作「京洛四季」を発表した由。どうも川端は、失われゆく京都に危機感を抱いていたようです。なので、少し前の昭和36〜37年に執筆した『古都』にも熱が入り、森さんはそれを敏感に感じ取られたのではないでしょうか。本題とあまり関係ない話で、恐れ入ります。
Posted by 吉田達郎 at 2020年11月18日 00:35
吉田さん、川端康成の話を教えていただき、ありがとうございます。京都は古い町並みが残っているとよく言われますが、実際はそうでもないように思います。百万都市なので、どんどん変化している側面が大きいですね。
Posted by 松村正直 at 2020年11月22日 08:00
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