副題は「日本社会は「共生の原理」で動く」。
「里海」とは「人手が加わることにより生物多様性と生産性が高くなった沿岸海域」のこと。瀬戸内海沿岸各地で行われている里海を生かした活動を取材した一冊。『里山資本主義』の概念をさらに拡大して、今後のさらなる可能性を探っている。
岡山・笠岡のカブトガニ博物館に行くと、すぐに実感できる。一〇年ほど前までは「建物の中」が博物館だった。今はその前の「干潟が博物館」だ。
岡山に住んでいた1993年に、このカブトガニ博物館を訪れたことがある。その時の説明では、もう自然の繁殖地は減って絶滅状態とのことだった。それが今では劇的に改善しているらしい。
そう言えば、数日前に「瀬戸内海きれい過ぎ」問題がニュースになっていた。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6374643
ダントツに過疎がすすむ島。それを、どうとらえるか。「二〇世紀の常識」に頭を支配された人は、見るとがっかりするのだろう。「二一世紀の新たな常識」として里山・里海の見方や発想を獲得した人はどうか。この島にこそ時代を切り拓く最先端がある、と考える。
右肩上がりだった時代の発想や考え方が、今もなお社会や政治の場面で中心となっている。それを、いかに転換していくか。
江戸時代、現在の都道府県で区分してみて最も人口が多かったのは、東京でも愛知でも大阪でもなく新潟県だった。
新潟と言われると驚くが、東京一極集中の歴史も実はそれほど古いものではないのである。
2015年7月10日、角川新書、800円。