2020年09月20日

外山滋比古『思考の整理学』


今年7月に亡くなった著者のベストセラー&ロングセラー。「刊行から34年 驚異の245万部突破」と帯にある。

ベストセラーと言われる本はあまり読まないのだけれど、この本はさすがに良かった。ものを考えるヒント(答ではなく)がたくさん詰まっていて、考えたり書いたりすることが楽しくなるような内容である。

学校はグライダー人間をつくるには適しているが、飛行機人間を育てる努力はほんのすこししかしていない。
夜考えることと、朝考えることとは、同じ人間でも、かなり違っているのではないか、ということを何年か前に気づいた。
独立していた表現が、より大きな全体の一部となると、性格が変わる。見え方も違ってくる。前後にどういうものが並んでいるかによっても感じが大きく変わる。

これは、短歌の連作についても当てはまる話。

中心的関心よりも、むしろ、周辺的関心の方が活潑に働くのではないかと考えさせるのが、セレンディピティ現象である。
講義や講演をきいて、せっせとメモをとる人がすくなくない。忘れてはこまるから書いておくのだ、というが、ノートに記録したという安心感があると、忘れてもいいと思うのかどうか、案外、きれいさっぱり忘れてしまう。

まったく同感。下を向いてメモしているより話者を見ていた方が、話の内容が頭に残る。

書く作業は、立体的な考えを線状のことばの上にのせることである。
題名の本当の意味ははじめはよくわからないとすべきである。全体を読んでしまえば、もう説明するまでもなくわかっている。

これも、連作の題や歌集の題を付ける際に踏まえておきたいこと。

調子に乗ってしゃべっていると、自分でもびっくりするようなことが口をついて出てくる。やはり声は考える力をもっている。
散歩のよいところは、肉体を一定のリズムの中におき、それが思考に影響する点である。

こんな感じで、印象に残った箇所を引いていくとキリがないほどだ。

1986年4月24日第1刷発行 2020年3月5日第122刷発行
ちくま文庫、520円。


posted by 松村正直 at 22:52| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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