副題は「日本経済は「安心の原理」で動く」。
7年前に刊行されてベストセラーになった本をようやく読んだ。里山をキーワードに、今の日本が抱える問題点への対策を論じている。
「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、予め用意しておこうという実践だ。
こうした考えのもとに著者が掲げるのは以下の3つのことである。
・「貨幣換算できない物々交換」の復権
・「規模の利益」への抵抗
・分業の原理への異議申し立て
これらは田舎暮らしをしていなくても、それぞれの生活の場で実践可能な考え方だろう。今では工場の現場でもライン生産からセル生産方式への切り替えが進んでいる。もはや大量生産・大量消費の時代ではない。
経済成長のために、地域を安価な労働力や安価な原材料の供給地とみるのではなく、地域に利益が還元される形で物つくりを行う。ただし、そのために自分たちが犠牲になる必要もない。自分たちも、ちゃんと利益をあげる。
本書では「エコストーブ」「木造高層建築」「CLT建築」「ジャム作り」「自然放牧の牛乳」など、様々な実例が紹介されている。読み終えて少し明るい気分になれる一冊だ。
2013年7月10日、角川ONEテーマ21新書、781円。