副題は「牛、豚、鶏たちが美味しい食材になるまで」。
家畜(豚、鶏、牛)がどのように育てられ、食肉となっていくかを、写真や図をまじえて詳しく記した本。
現在の肉豚の多くは、出荷日齢は一六〇日、出荷体重が一一〇kgということになってきている。
今の鶏の大部分はとうに就巣性というものがない、いや、なくさせられているから、産んだ卵にはまったく関心を示さずに唯々卵を産み続ける。
一般に卵用鶏の雄雛は育つのが遅く、その肉質もよくないので、しかるべく処分される。(・・・)良好なタンパク質供給源として加工処理され、他の動物に与えられる素材になるという。
盛んに産卵を続けてきた鶏も、四〇〇卵以上を産むとさすがに疲れが出始め、休産日が多くなる。系統によって、それぞれの採算ベースが決められているので、個体の成績には目もくれずに一斉に処分される。いわゆる廃鶏と称するものになる。
ここ三〇年ばかりの間に、ブロイラーの成長は著しく速くなり、出荷日齢は、一九六〇年代の一二週齢から、六〜七週齢へと短くなってきた。
生まれる子牛の半分は雄であり、種牛候補として残されるのは二〇〇頭に一頭もいないだろう。したがって肥育用の素畜となる雄子牛は、未成熟の生後二〜三ヵ月の間に去勢して、第二次性徴が現れないようにする。
わずか6か月で110キロまで太らされて出荷される豚、生まれてすぐに処分される卵用鶏の雄の雛、400個の卵をひたすら産み続けた後に処分される雌鶏、生後2〜3か月で去勢されてしまう雄牛。
知れば知るほど、何ともすさまじい世界だ。家畜の育成はどんどん合理化され、工業製品と同じように徹底的に生産性が追求されている。
こうした実態を頭の片隅に置いて、日々の肉を食べなくてはいけないのだと思う。
2001年8月20日第1刷発行、2012年10月1日第4刷発行。
講談社ブルーバックス、940円。