2020年08月10日
知里幸惠編訳『アイヌ神謡集』
アイヌの神謡(カムイユカラ)13篇を、アイヌ語のローマ字表記(左ページ)と日本語訳(右ページ)で記した本。巻末に金田一京助「知里幸惠さんのこと」と弟の知里真志保の「神謡について」を収めている。
これまで何となく敬遠して読まずに来たのだが、読んでみたらとても面白かった。「梟の神」や「狐」や「兎」や「蛙」が一人称で話す物語。繰り返しの多いリズムも楽しく、人間と自然の豊かな関係が感じられる。
序文で「おお亡びゆくもの……それは私たちの名」「激しい競争場裡に敗残の醜をさらしている今の私たち」とアイヌの行く末を案じた著者は、本書を書き上げて間もなく19歳で亡くなった。でも、その名著は今も多くの人に読み継がれている。
1978年8月16日第1刷、2020年2月5日第60刷、
岩波文庫、580円。
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