2020年07月30日

北原モコツトゥナシ・谷本晃久監修『アイヌの真実』

著者 :
ベストセラーズ
発売日 : 2020-05-21

KKベストセラーズが新たに創設する新書シリーズの1冊目。アイヌの文化や歴史についてコンパクトにまとめてある。

アイヌ民族は狩猟採集生活だけを行っていたわけではなく、北の海を駆けめぐった交易者でもあった。
「先住民族」とは、ある地域を現在支配している国家・民族よりも以前から、その地域に住み、民族としてのアイデンティティを共有していた人びと(及びその子孫)のことをいう。
政府はアイヌ民族の風習、たとえば女子の顔への入れ墨や男子の耳飾りなどを「陋習」(非文明的な風習)として禁止し、日本語の使用を義務付け、和人風の名前に改名させた。

明治政府のこうした政策は、昭和に入って朝鮮半島で行われた創氏改名につながるものと言っていい。朝鮮半島が現在は独立した国家になっているのに対して、アイヌは国家を持たないために議論されることが少ないだけである。

千島アイヌの女性「シケンルッマッ」(1867〜1939)が、ロシア名「アレクサンドラ・ストローゾワ」や日本名「浪越あさ」を持っていたことを思うと、国家や国境がいかに人々を分断してきたかがよくわかる。

私たちはどうしても現在の国境線に縛られて歴史を見てしまうが、例えば、次のような地理的な条件を知ると、大陸と樺太と北海道の関わりの深さも見えてくるだろう。

大陸と樺太の間の「間宮海峡」は水深約10メートル
樺太と北海道の間の「宗谷海峡」は水深約50メートル
本州と北海道の間の「津軽海峡」は水深約150メートル

今月、北海道白老町に国立アイヌ民族博物館を含む「民族共生象徴空間」(ウポポイ)が開業した。私もアイヌについての理解をさらに深めていきたいと思う。

2020年5月30日、ベスト新書、1300円。


posted by 松村正直 at 17:44| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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