副題は「10歳から学ぶ狩猟の世界」。
ジャンルは児童書なのだが、内容は本格的な狩猟の入門書。獲物の痕跡の見つけ方から罠の仕掛け方、獲物の仕留め方、解体の仕方まで、カラー写真入りで詳しく解説している。
ぼくもふだんは週の半分くらいを地元の運送会社で働いて、残りの日を中心に山に入っている。ぼくの場合は食料調達がメインの目的なので、狩猟のことは職業でも趣味でもなく「生活の一部」だと考えている。
たまに、わなにかぶせてある落ち葉をていねいに鼻でどけて、わなを丸見えにして去っていく、とんでもなく賢いイノシシまでいる。
ベジタリアンと猟師というと、正反対の立場のように思えるかもしれないけど、「動物のことが好き」という点では共通している。
家畜の肉に慣れていると、肉の品質は常に一定だと思いがちだ。でも、野菜や魚に旬があるように、野生の肉にもおいしい時期もあれば、そうではない時期もある。
イノシシの肉は固いという一般的なイメージに対して、著者は次のように述べる。
家畜であろうと野生であろうと、動物は年をとったらそのぶん肉がかたくなる。家畜の豚は生後6カ月程度で110キロまで大きくなるように品種改良されていて、その段階で出荷される。つまり、みんなが食べている豚肉はすべて生後6カ月の子豚の肉だ。
こうした事実を私たちはどれくらい知って、毎日の肉を食べているのか。そうした問題も突き付けてくる一冊である。
来月には著者が主演のドキュメンタリー映画「ぼくは猟師になった」が公開される。今から楽しみだ。
2020年1月15日、旬報社、1500円。