イスラム地域研究者の内藤正典とイスラム法学者でムスリムの中田考が、イスラムの様々な知恵について語り合った本。人生、ビジネス、男女、貧困問題、心の病、高齢社会、家族、世界平和といった話題について、イスラムの観点からの見方・考え方を教えてくれる。
中田 お金を払って買う人間はそもそも「お客(guest)」じゃない。Customerです。それが日本だと、そもそも商業文化があまりないもので……
内藤 西洋諸国の多くは、「世俗主義」、日本では「政教分離」と言ったほうがわかりやすいですけど、政治や公の領域に、教会や宗教は出ちゃいけないんだという原則で国を作ってきた。
中田 日本みたいに「収入がないから結婚できない」というのはバーチャルな妄想です。妄想の中で生きているんですよね。
中田 イスラームの教えの基本は「人の言うことは気にしなくてもいい」ということなのですよね。神様が認めてくれればそれでいいわけですから、人がなんと言おうとかまわない。
中田 イスラームでは「寿命は決まっている」という考え方ですので、長生きするのがいいというのはべつに言いません。
内藤 日本人の世界観はどこか情緒的です。トルコなんて、枕詞みたいに「親日国」と言われますが、そもそも大半のトルコ人は日本のことを知りません。
こんなふうに、西洋的な考え方とも日本的な考え方とも違うイスラムの考え方を知るだけでも、ずいぶんと新鮮な気分になる。そもそも「国」だって、自明なものでも何でもない。「日本」や「日本人」という枠組みに縛られている必要もないのかもしれない。
2019年3月5日、ミシマ社、1600円。