人気マンガ「ゴールデンカムイ」のアイヌ語監修を務めている著者が、アイヌ文化やアイヌ語、アイヌの世界観について記した入門書。随所に「ゴールデンカムイ」の場面が引用されている。
アイヌ語では「見る」には二種類あって、「テレビを見る」「本を見る」のように、見るものが前もってわかっている場合はヌカㇻという語を使い、「窓の外を見る」「遠くのほうを見る」のように、何が見えるかは見た後でわかるような場合にはインカㇻという語を使うことになっています。
カムイは本来魂だけの姿でカムイの世界にいて、そこから人間の世界にやってくるわけですが、そこに戻る時にも肉体から離れて魂の姿になって戻らなければなりません。それも自分の力で肉体から抜け出すことはできず、人間の手で解放してもらわなければならないことになっています。それが狩猟であり、木を切ることであり、山菜を採取することであるのです。
アイヌモシリというと、普通は人間が暮らしているこの世界ということで、カムイモシリ「カムイの世界」に対置されるものです。近年では日本語の文脈の中で「北海道」を表すのに使われることがありますが、アイヌ語のテキストの中でそういう意味で使われている例はほとんどありません。
どれも、非常にわかりやすい説明だと思う。アイヌモシリ=北海道という捉え方は、アイヌの人に寄り添っているように見えながら、実はアイヌの世界を矮小化してしまう危険性を孕んでいることを初めて知った。
2019年3月20日、集英社新書、900円。