2020年06月07日
木原善彦『アイロニーはなぜ伝わるのか?』
「言いたいことの逆を言う」かのようなアイロニーがなぜ相手に伝わるのか。豊富な用例を提示しながら丁寧に解説している。
従来の「こだま理論」「ほのめかし理論」「偽装理論」などを紹介・批判したうえで、著者が示すのは「メンタル・スペース理論」。〈期待〉される世界と〈現実〉の世界との衝突や差によってアイロニーが生まれるというものだ。
この説明ですっきり納得が行くかと言えば、残念ながらそこまでではない。もやもやしたものが残る。ただ、様々なアイロニーの型や例が挙げられているので、それを読むだけでも面白い。
本の内容とは離れるが、今年5月6日にバンクシーが発表した作品「Game Changer」について、医療従事者への感謝を表しているという見方もあれば、医療従事者をヒーロー扱いする政府やメディアへの皮肉という意見もあった。
同じ作品をアイロニーとして受け取る人とそうでない人がいる。これは短歌の読みにおいても時おり見られることで、アイロニーという方法の奥深さであり難しさでもあると思う。
2020年1月30日、光文社新書、780円。
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