2020年05月30日

大東和重『台湾の歴史と文化』


副題は「六つの時代が織りなす「美麗島」」。台湾の歴史や文化を「先住民族」「オランダ統治」「鄭氏政権」「清朝文化」「日本の植民地」「国民党独裁と民主化運動」という6つの時代順に記した本である。

けれども、いわゆる概説書とは大きく違う。かつて著者が住んでいた台南を中心に、國分直一、前嶋信次、新垣宏一、葉石濤、呉新榮、王育徳ら台南にゆかりのある人物のエピソードを織り交ぜる手法で記述している。

戦争にまつわる日本人の記憶から、かつて「日本人」として戦った高砂義勇隊は、完全に抜け落ちた。太平洋戦争はあたかも、内地に住む「日本人」だけが戦い、「日本人」だけが被害に遭ったかのごとく記憶された。
一六二〇年代、オランダ商船はインドネシアのバタヴィアから、安平を経て、平戸へと来航した。これらの港は、当時のヨーロッパにおける金融の中心、アムステルダムと海でつながっていた。
民主化以降の台湾では、「正名運動」といって、地名などを台湾風に変更することが主張された。(・・・)全島共通の道路名はそのままである。どの街に行っても、街の中心にでたければ、中山路や中正路をめざせばよい。
台湾の民主化運動は、「本土化」の運動でもあった。本土化は「台湾化」と言い換えることができるように、外来政権である国民党が台湾に根差した政党となり、中華民国が中国全土を統治する国家でなく、台湾サイズへと収まる変化である。

400年の歴史を持つ台湾であるが、1980年代までは外来の政権が一貫して台湾を支配し続けてきた。台湾に住む人が自らの手で台湾を治める時代がようやくやって来たのである。

また台湾に行ってみたくなってきた。

2020年2月25日、中公新書、900円。

posted by 松村正直 at 17:46| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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