2020年05月03日
川越宗一『熱源』
史実をもとにした小説。第162回直木賞受賞作。
ヤヨマネクフ(山辺安之助)、千徳太郎治、ブロニスワフ・ピウスツキ、金田一京助などの実在の人物をモデルに、1881(明治14)年から1945(昭和20)年までという長い時間を描いた壮大な群像劇。
舞台は樺太(サハリン)を中心に、北海道、ロシア、ポーランド、東京、南極など。国境を越えて様々な民族が行き来する姿と、戦争や国境線の変更によって人々の人生が翻弄される様子が、なまなましく浮き彫りにされている。
近代日本のナショナリズムや世界的な帝国主義の伸張によって、次第に追い詰められていく少数民族や辺境に住む人々。彼らは何を感じ、どのように生きたのか。「生きる」ことの意味をあらためて問い掛けてくる一冊である。
2019年8月30日、文藝春秋、1850円。
この記事へのコメント
コメントを書く