蠣崎波響の「夷酋列像」は代表的なアイヌ人物像として有名であるが、(・・・)この絵に限らず「蝦夷」を描いた絵画は、文献同様、おしなべて描く側のイデオロギー性なり文化意識を強烈に発散させているとみておかなければならない。
「夷酋列像」は4年前に展覧会で見て、その鮮やかな色彩や力強さが印象に残っている。
http://matsutanka.seesaa.net/article/435963678.html
けれども、この絵の描かれた背景や夷風性を強調した描き方なども、十分に理解して鑑賞する必要があるのだろう。
武家社会の需要が高かった鷲鷹類の羽も重要な北方交易品として見逃せないものの一つである。羽が最高級の矢羽となる大鷲や尾白鷲は千島からカムチャッカにかけて、および樺太から沿海州にかけてが繁殖地であり、蝦夷地にも多く冬鳥として飛来したからである。
オオワシやオジロワシの羽が矢羽として流通していたことは初めて知った。近年まで弓道においても使われていたらしい。現在はワシントン条約などの制限に基づき、「保有」のみOKで「使用」「譲渡」は禁じられてる状態とのこと。
https://www.kyudo.jp/pdf/info/usearrow_3.pdf
蝦夷平定の地に北方守護の観音や毘沙門がつぎつぎ建てられていくのは、武力討伐のあとの仏教による魂の征服といってよいかもしれない。
これは、近代以降、台湾・朝鮮・樺太・満洲・南洋群島に多数の神社が建立された事実ともつながる話だ。下記のサイトによれば「その数は史料上確認されているものだけでも1,600余社」にのぼっている。
http://www.himoji.jp/database/db04/
アイヌと和人の関係をめぐる問題は、こんなふうに様々な形で現代までつながっていることなのだと思う。