2020年04月23日

アサダ・ワタル『住み開き 増補版』


副題は「もう一つのコミュニティづくり」。
2012年に筑摩書房より刊行された単行本を増補・文庫化したもの。

自宅の一部をカフェや美術館、図書館、イベントスペースなどとして開放することを「住み開き」と名付け、全国で35件の実践例を紹介している。印象的なのは、「住み開き」を通じてそれまでとは違うタイプの人と人のつながりが生まれていることだ。

集会所を借りるよりもお金がかからない、などの経済的な面もあるだろうが、何よりも、「自宅開放」が人とのつながりをより強固に編み上げる機能を果たしているのだ。
結局のところ、「住み開き」は他者を変える、地域を変える前に、「私」をこそ開き、「私」をこそ変えるのだと。

もちろん、自宅に人が出入りするのだから難しい面もたくさんある。実際に「2012年発刊当時掲載した31事例のうち、実に半数以上が同地での活動を解消」しているそうだ。別形態への展開や発展的な解消もあるけれど、「掲載の数年後に、メンバーの仕事と生活の環境変化のために活動終了」といった例もある。

そうした後日談も含めて、いろいろと学ぶことの多い一冊であった。

2020年3月10日、ちくま文庫、820円。


posted by 松村正直 at 08:47| Comment(4) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わたしも昔、2000年ころ自宅の八畳程度の小さなスペースでそういうことを試みましたが(詩人とダンサーのコラボイベントなど)なかなか長続きせず、今は開店休業(ビジネスではないですが)で、町内会の集会場に使っているくらいです。こういう本があるのかと思い読んでみようと思いました。
Posted by いわこし at 2020年04月25日 10:42
詩人とダンサーのコラボイベント、おもしろそうですね。「塔」の再校作業もずっと永田さんの家でやってましたが、これも一種の住み開きかもしれません。シェアハウスの流行なども含めて、近年いろいろと新しい動きがあるみたいです。
Posted by 松村正直 at 2020年04月25日 18:22
こんばんは。
NHK短歌、楽しく拝見&学ばせて
いただいてます。
一年間、よろしくお願いいたします<(_ _)>

内容はかなり忘れましたが、この本の
増補版の前のを読みました。

アサダワタルさんのワークショップに
参加したこともあります!
以前紹介されてた、『ナリワイを作る』
の伊藤ひろし(字を忘れました)さんの
ワークショップにも参加しました!
とてもあこがれる生き方ですが、
センスや、コミュニケーション能力が
必要だと思いました。

ワークショップを企画した方も
頭の良い方で、京阪三条近くで
シェアハウスをされてます。
今は、携帯を変えてはるかも?

私も京阪三条近くの友人宅で、月一
猫カフェごっことフリマをやってます。

シェアハウスのオーナーさんが、
訪ねてくれて、ご縁をいただきました!

今は、このご時勢で休業中?ですが…(--;)

なんか自分のことばかり書いてしまい、
申し訳ありません<(_ _)>

先生のご自愛とご活躍をお祈りいたします。
番組も楽しみにしています!
Posted by RM at 2020年04月25日 22:51
伊藤洋志さんやphaさんの本もよく読んでます。
新しい住み方や暮らし方、仕事のしかたを提言・実践している方には興味がありますね。まあ、自分は自分で、自分のできる方法で生きていくしかありませんけど。
Posted by 松村正直 at 2020年04月26日 15:07
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