2010年に世界文化社より刊行された『日本人の日本語知らず。』を改題・加筆修正して文庫化したもの。日本語教師、日本語教師養成講座講師を務める著者が、数々の具体例を挙げながら日本語の魅力や不思議を教えてくれる。
動詞から名詞への転成は、日本語ではたいへん簡単にできます。(・・・)今ざっと机の上を見まわしただけでも、はさみ、下敷き、爪切り、ものさし、ペン立て、筆入れ、があるのですが、これらも、はさむ、敷く、切る、などの動詞から作られた名詞です。
「歌う」と言ったら「今から」歌うのです。未来です。「結婚する」と言ったら、「近々」結婚するのです。将来の予定です。動詞のタイプによっては、辞書に載っている形が「現在」形とは限らないのでした。
「やめる」に意志があれば、「〜で」は〈手段〉や〈道具〉を表し、意志がなければ〈原因〉を表すことになるのです。
日本語に移入された時期の早い外来語は、「チ」が多く、歴史の浅い外来語ほど、「ティ」で書かれる例が増えます。つまり「ティ」のほうが、新しいのです。
全21章、どこを読んでも新しい気付きに満ちている。日本語教師になろうかなと思うくらい面白い。
2018年8月25日、中公文庫、700円。