
10年ぶりに刊行された第11歌集。
現在の日本の政治状況・社会状況を憂える内容の歌が多い。
東京愛国五輪「日本ガマタ勝ッタ!」この永遠の戒厳令下
過労死の心霊もいるスポットと呪縛うれしき新国立競技場
駅前にアイドルならび声そろえ「千人針にご協力くださーい!!!」
新国立競技場のトラック喘ぎつつ夜ごと円谷幸吉走る
タブロイド版の見出しの大文字の「国民精神総動員(ONE TEAM)」 珈琲苦し
向日葵の数限りなく立ち枯れて向日葵畑そのジェノサイド
新国立競技場には屋根ありて雨に濡れざる学徒出陣
2首目、競技場建設に関わって亡くなった作業員たち。
3首目、もし戦争が始まればアイドルも戦争協力に駆り出される。
5首目、最近流行りの「ワンチーム」に戦前の「国民精神総動員」運動を重ねている。
7首目、昭和18年の出陣学徒壮行会は雨の神宮外苑で行われた。
東京オリンピックの延期が決まった今読むと、何か時代を予言したような印象も受ける一冊だ。
2020年3月11日、六花書林、2500円。