歴史総合パートナーズ5。
このシリーズはコンパクトで奥が深くおススメ!
アイヌの歴史や先住民の問題については基本的な部分で知らないことが多かったので、非常にためになる内容であった。
先住民問題とは石器時代に遡る話ではなく、多くの場合、近代史の産物なのです。
現在に伝わるアイヌの伝統文化が花開いたのは、実は和人との経済関係でいえば場所請負制の全盛期にあたる18世紀後半から19世紀にかけての時期であるともいわれています。
アイヌの近代においては、政府が強要する「同化政策」とアイヌ自身による自発的な「文化変容」を分けて考える必要があるのです。
実際には和人のアイヌへの同化という現象も見られたにもかかわらず、アイヌと和人の通婚によって、アイヌのほうが一方的に和人へ同化し、アイヌという固有の民族は消滅する、と考えられていた(…)
本書の優れている点は、アイヌを差別され虐げられてきただけの民族といった捉え方はしていないところだろう。差別や抑圧の問題点を指摘するとともに、アイヌの主体的な動きもきちんと描き出している。
これは非常に微妙な部分なのだが、著者はアイヌを差別や庇護の対象として見るのではなく、和人と対等な存在として、できるだけ客観的に記述しようとしている。その姿勢に共感を覚えた。
2018年8月21日、清水書院、1000円。