2020年02月27日

「塔」2020年2月号(その2)

ポケットの中で洗濯されているような気持ちで新宿にいる
                  長谷川麟

大勢の人が行き交う新宿の雑踏にいる心細さと、めくるめくような感覚。それを四句目までの長いユニークな比喩がうまく伝えている。

雪うさぎの二円切手買ふ 二千万必要といふ国に老ゆべく
                  森永絹子

郵便料金の値上げに伴ってよく使われるようになった2円切手。郵便局で「二円」の切手を買いながら、老後「二千万」円問題を思う。

木枯らしに二度も三度も庭を掃く柿の葉擦れに耳傾けて
                  澤田清志

風が強く吹いて、さっき掃いたばかりなのにまた葉が散っている。「二度も三度も」は苛立ちのようだが、下句を読むとむしろ穏やか。

玉ねぎを欲しいといへば二十キロ持たせてくれる兄のやうな人
                  森 絹枝

北海道に住む作者。この知り合いの農家はスケールも大きいし、気持ちも大きい。ちょっと欲しいと言ったら箱ごとドーンとくれたのだ。

真剣に遊んでこなかったんかなあコマもあやとりも教えられ
ない                吉田 典

上句の述懐がいい。コマの回し方やあやとりの取り方を子どもに教えようとして、「あれ?どうだったっけ?」と困ってしまったのだ。

ふるさとの島は遠くて東京の島を訪ねる ある晴れた日に
                  紫野 春

島に生まれ育って現在は東京に住む作者。島とはまるで正反対の環境にいて、時々島が恋しくなるのだ。近場の島の空気を吸いに行く。

posted by 松村正直 at 07:47| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。